融資

黒字でも融資がNGになる理由──銀行は決算書のどこを見ているか

決算書が黒字なら融資は通る——そう思っていると、思わぬところでつまずきます。銀行が決算書のどこを見て「この数字は調整されているな」と判断しているのか。ゲストに迎えた銀行実務のプロに、包み隠さず話してもらいました。

目次

銀行はまず「当期純利益」を見る

最初に見られるのは当期純利益です。ここで問題になるのは、金額そのものよりも売上とのバランス。

たとえば売上が3,000万円ある資産管理会社で、最終利益が数千円という決算書が出てくることがあります。売上と利益の関係として、そんな数字にきれいに着地することは、まず起こりません。「東京タワーのてっぺんから目薬を落として目に入れる」くらいの確率だ、という表現が出てきました。

つまり、売上と利益を並べた瞬間に「どちらかをいじったな」と分かってしまうということです。慣れた銀行員なら1秒もかかりません。

「上をいじったか、下をいじったか」は現預金で分かる

では、売上(上)をいじったのか、費用(下)をいじったのか。ここを見分けるのに使われるのが、貸借対照表の現預金です。

  • 現預金がスカスカ(売上規模に対して極端に少ない)→ 売上を膨らませた可能性
  • 現預金が厚い(売上の3割が残っているなど)→ 費用側で調整した可能性

損益計算書は比較的いじりやすい。でもいじった結果は必ず貸借対照表にしわ寄せが出ます。決算は「その日の断面」を切り取るものなので、利益をずらせば、どこかに資産科目を作るか、負債を減らすしかなくなるからです。

怪しい勘定科目は、自分で「調整しました」と言っているのと同じ

具体的に目立つのが、次のようなケースです。

  • 仮払金が不自然に大きい
  • 大家なのに多額の売掛金が立っている
  • 去年まで無かった科目が、今年から急に立ち始めた

家賃は当月分をその月に、あるいは前月に受け取るのが普通です。「後からもらいます」という売掛が、大家業で大きく立つことは基本的にありません。にもかかわらず多額に計上されていれば、そこで一気に怪しくなります。12ヶ月分では足りずに13ヶ月分の家賃を取りに行った——そういう決算は、見る人が見れば分かってしまいます。

減価償却後の赤字は、思っているより印象が悪い

不動産業は減価償却のビジネスモデルなので、「償却後の赤字なら問題ないだろう」と考えがちです。ところが銀行から見ると、そうではありません。

不動産業の二大経費は、金利と償却です。その二つを入れて赤字だと言われても、卸売業者が「在庫がもう少し安ければ利益が出た」と言っているのと変わらない——そう受け取られます。

ただし例外はあります。償却の終わった物件を買って、最短の年数で一気に償却した結果の赤字であれば、事情として説明がつきます。問題は、新築を建てて法定年数どおりに償却して赤字になっているケースです。

償却年数は、実は自分で選べる

ここが今回いちばんの学びでした。耐用年数の切れた木造なら最短4年で償却できますが、4年にしなければいけないわけではありません。10年で取ることもできます。

4年に寄せれば償却費は大きくなり、税金は出ません。しかしその結果が赤字なら、銀行から見れば「融資は1年休み、2年休み」になりかねない。

「4年なら赤字だけど、10年なら黒字。最初から10年を選べばよかったのでは?」——これが銀行側の見方です。税理士は良かれと思って税金が出ないように組んでくれますが、融資を受けて規模を伸ばすなら、納税して黒字を作る判断が要ります。調整するのは税理士ではなく、経営者であるあなた自身です。

「別表16」に償却不足を出さない

もうひとつ、知らないと踏む地雷が別表16です。ここには「本来これだけ償却できるが、今期はこれだけしかしなかった」という差が明記されます。

赤字を避けたくて「今期は償却なしにしてください」と頼むことは、実際にできてしまいます。ただしその瞬間、別表16に償却不足が残る。銀行から見れば、ビジネスモデルの根幹としておかしいと映ります。

償却で調整したいのであれば、まず別表16をきれいにしておくこと。年数の選択は決算を組むときではなく、物件を買うときから考えておくものだ、という話でした。

まとめ

  • 銀行は当期純利益を売上との関係で見る。不自然さは一瞬で伝わる
  • 上をいじったか下をいじったかは現預金で判別される
  • 仮払金・不自然な売掛金は「調整しました」と書いているのと同じ
  • 償却後の赤字は印象が悪い。ただし償却年数は選べる
  • 別表16に償却不足を残さない。判断は買うときから始まっている

黒字か赤字かという一点ではなく、その数字がどう作られたかを見られている。そう考えておくと、決算の組み方は変わってくるはずです。


この記事は、YouTube「バランス大家ちゃんねる」で公開した内容をもとに再構成したものです。
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